富山和子ご挨拶

日本の米カレンダー2018年版が出来ました。
創刊29年目です。


<三十年間 この活動を一貫してご支援くださったのは皇后陛下でした>
  2010年8月には日本の米カレンダー展(つくば食と農の科学館)に天皇皇后両陛下おそろいで行幸啓なされました。皇后さまはこのカレンダーのために額を作らせ、毎月ご自分で入れ替えられ切り取った分を改めて和英つき合わせて一言一句お読み返しになり、何かお気づきのことがあればわが家にお電話をくださいます。その額は、御所の二階に飾られています。

<所得保障制度の充実を>
  これを始めたのは米の市場開放が近づいてその危機感からのことでした。私は遅筆だから本を書いていたのでは間に合わない。カレンダーなら文章は少なくて済む。それに1ヶ月毎日毎日見て頂けるし、家中でみんなで話しあって頂ける。何よりも写真と文の組み合わせという方法に編集者の血が騒いだのでした。それまでは「水を張った段々畑を思い浮かべてみてください。なるほど小さなダム群が斜面に張り付いている姿ではありませんか。水田は治水と利水の多目的ダムなのです。」 そんな風に説明しながらお話ししていたものが、一目で理解されるようになったのです。たちまち棚田ブームが起こり、「棚田」の語も一般化されるようになり、探すのに苦心していた棚田の写真もカメラマンの競って撮る風景となりました。まるで静かな水面に石を投げたようだと思い、カレンダーというものの特殊な影響力を教えられたものでした。が、それとひき換えのようにして水田も水路も水面も姿を消していったのです。 いま、30年を経て、風景の余りの変わり様を思い、せめていまも懸命に農業を守っている人達、耕作放棄地など引き受けて初めて農業に取り組んでいる若い人達に、所得保障の更なる充実をと願わずにはいられません。 フランスなど欧米諸国を見て下さい。      

<豊洲移転反対>
 東京築地の卸売市場。『海は生きている』にも登場するように築地は世界の宝です。その行方が危うい。築地がなぜ豊洲に移らねばならないのか、今もって理解できません。豊洲はいわば「毒のたまり場」、築地のリニューアルなら方法はいくらでもあるのに、なぜわざわざ巨費を投じて汚いところへ移らねばならないのか。調べても調べてもまた何か出てくる、豊洲はそんなところのようです。いろんな分野の科学者たちの署名や声明が知事のところに寄せられているのです。 豊洲への移転は「安全」が保証されるのが大前提の筈でした。それがいつの間にか無視されている、とうてい納得できません。      

<青い鳥文庫版完結>
  『海は生きている』(講談社)が青い鳥文庫版になりました。富山和子の自然と人間 シリーズ『川は生きている』、『道は生きている』『森は生きている』『お米は生きているに続く5冊目です。親本の初版(1978年)から40年、幾度となく版を重ねて読み継いで頂きました。5冊のうち『川』と『お米』 と『海』の3冊は青少年読書感想文コンクールの課題図書にもなりました。日本列島という特殊な国土と、そこに築かれた日本文化という独特の文化をその土台から知っておきたいという人が、まだまだ沢山いるということに、心強い思いが致します。   



2017年秋 水の文化研究所 富山和子


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